「野の花」
「野の花」
作品内容

第二次世界大戦下のドイツで、政治と人種の壁を越えて永遠の友情を手にした、ドイツ人のリーザとユダヤ人のルイーゼ、二人の女性の物語を描くハマナカトオル脚本のストレートプレイ。

久しぶりに祖母の家にやってきた孫のイーダ。引っ込み思案で学校に馴染めないイーダを励まそうと、祖母が語った女学生の頃の話。それは、生まれつき片足が悪く、「かわいそうなリーザ」と呼ばれていた若い頃の祖母と、 いつも祖母を助けてくれた太陽のように明るい親友ルイーゼとの友情物語だった。

ドイツ人のリーザとユダヤ人のルイーゼは、ヒトラー政権下で、次第に友情を引き裂かれて行く。時代は第二次世界大戦に突入。ユダヤ人は強制収容所送りとなり、ルイーゼの行方も分からなくなった。しかし、リーザがルイーゼを忘れることはなかった。 戦争のため家族を失い、孤独となったリーザは、ルイーゼをさがすため、一人旅に出るのだった・・・。

「野の花」
キャスト表
「野の花」
脚本
作家より
人間の良心を信じる
脚本 ハマナカトオル

「野の花」は、ヒトラー率いるナチス政権下で、親友となったドイツ人の娘リーザと、ユダヤ人の娘ルイーゼ、そしてその家族と周囲の人間を描いたストレートプレイです。第二次世界大戦を背景にした舞台作品を、私は「ひめゆり」「スウィングボーイズ」 「わだつみのこえ」と書いてきましたが、ヨーロッパを舞台にした作品は、これが初めてです。しかし、この時代について勉強することは私のライフワークのようになっていて、ヒトラーとナチスドイツに関しても長年興味を持って学んで来ましたので、 目をつぶればリアルな世界観が浮かんで来て、隣の家で起こった出来事のように登場人物は生き生きと動きだし、一つ一つの役に親しみを感じながら書くことが出来ました。

発想の原点は、若い時に見たマレーネ・ディートリッヒのコンサートで彼女が歌った「花はどこへ行った? Where Have All The Flowers Gone?」に感動した記憶です。ドイツ人の女優として世界的に活躍したディートリッヒは、ナチスドイツ時代、 祖国を離れアメリカに亡命して、反ナチスの活動をしています。その彼女が歌うこの反戦歌は非常にドラマティックで、歌の持つ大きな力を教えてくれました。いつかこんな歌やドラマを書きたいと、その時思ったことが、時を経てこの作品に結びつきました。 間違った政治や独裁者にも打ち勝つ、人間の良心を描きたいと思っていました。台本のタッチとしては、近代劇的な脚本にしたいと考えていましたので、頭の中を近代劇の作家にして執筆しました。

この作品の舞台であるナチスドイツの時代は、武力による他国への侵攻(戦争)、ユダヤ人への迫害とホロコースト、焚書、障害者に対する差別など、今の私たちから見ると、絶対に間違っている政策が推進されていました。 日本も「お国のために死になさい」と言われていた時代で、「勝って栄える」大義名分のために、人間の良心が置き去りにされていました。今からわずか数十年前のことで、決して独裁者一人だけの問題ではありません。そんな時代に二度とさせないために、 私たちは、学ぶことが必要だと思っています。そのために演劇があることを、この作品を通じて訴えられれば幸せです。

「野の花」
作品ビジュアル
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「野の花」
舞台写真
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久田菜美さん作曲による「野の花」音楽のCDです。