ミュージカル「アワード」
ミュージカル「アワード」
作品内容

5年後のブロードウェイ。トニー賞の授賞式で、出揃った4つの新作ミュージカルのカンパニーが、トニー賞最優秀作品賞、主演男優賞、女優賞、作曲賞、脚本賞、演出賞などの賞(アワード)を競い合って奮闘努力する姿を、 ブロードウェイ100年の実話をもとに、笑いと涙とたっぷりの音楽で描いたミュージカル。成功するのは、どのミュージカル!?

今から5年後のブロードウェイのお話。今日はミュージカルの祭典、トニー賞の授賞式です。作品賞にノミネートされた4つの新作ミュージカルは、どれも斬新な話題作。

●1つ目は、ペンギンの恋愛と命がけの子育てを描いた可愛くて斬新なミュージカル「キングペンギン」。若手作家が創作し、世界的ポップスターのマンディ・ブルースが初めてブロードウェイ・ミュージカルの作曲を手がけ、 主演女優にはTVドラマ「チアガール」で全米の人気者になった新人女優ジョディ・ケリーを迎えて製作した作品。
●2つ目は、ヒット・ミュージカル「ハロー・ドーリー!」の続編ミュージカルを、引退した往年の大スター、 メアリー・ハットンの復活主演で上演する話題作「グッバイ・ドーリー!」。クラシックな作品の続編ながら、作曲のチャーリー・ブースによるラップ調の音楽が新しく、新たなドーリー物語の開幕となりました。
●3つ目は、 名作「風と共に去りぬ」誕生の裏話を、小説の作者マーガレット・ミッチェル、映画プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニック、映画で主役のスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーの3人のドラマとして描く 新作ミュージカル「名作誕生」。マーガレット・ミッチェル役を、歌のうまいナンシー・ヘイワードが演じています。
●4つ目は、善人な人気俳優が周囲におだてられて政治家になってしまい、最後は大統領にまで就任して、 国家の悪事や戦争に巻き込まれて行くスラップスティック・コメディ「ミスター・プレジデント」。演出は女性のオルガ・プリンス。主演の大統領役には、ベテラン俳優ジョン・フレミングを起用してオフ・ブロードウェイで幕を開け、 オンに上がってきた作品です。

どの作品がミュージカル作品賞に輝くのか、誰もが注目しています。また、主演男女優賞、助演男女優賞、オリジナル楽曲賞、脚本賞、演出賞、振付賞などの各賞を誰が受賞するのか、話題は尽きません。 製作には莫大な予算がかかるミュージカル。どのカンパニーも新作を成功させて、ロングランに繋げなければなりません。そのためにはトニー賞の受賞が不可欠です。カンパニーの命運がかかる授賞式。司会をつとめるのは、 今年のトニー賞主演男優賞にもノミネートされている人気俳優エディ・ルーニーです。彼の軽妙な司会で、いよいよトニー賞が始まりました。もちろん、最初は名物の華やかなオープニング・ショーです。各受賞者による個性に溢れたスピーチも感動的。 なかには、歴代の失敗作を供養するコーナーや、トニー賞の歴史を子供と若者たちが紹介するコーナーも。そして、授賞式が次々と進行するなかで、ドラマはノミネートされた4つの新作ミュージカルの、今日に至るまでの回想に移ります。そこには、 驚きの人間ドラマが・・・・!!??

ミュージカル「アワード」
キャスト表
ミュージカル「アワード」
脚本

◆ミュージカル「アワード」の作曲・編曲家は、久田菜美さんです。上演をご希望の方は、上演許可申請書を提出していただき、作曲家の許可をいただいてから、譜面を送らせていただきます。

作家より
「授賞式(アワード)」から描く舞台人の生きざま
脚本・作詞・演出・振付 ハマナカトオル

トニー賞の授賞式は、もう何十年も毎年見続けています。ウィットに富んだスピーチ、華麗なショー、そして感激の授賞。なにより私が一番感動するのは、出席者たちが皆、演劇やミュージカルという仕事を誇りに思っていることで、 アメリカと日本の演劇事情の差を羨ましく思いながら、毎年見つめて来ました。授賞式を録画したビデオやDVD(最近はブルーレイ・ディスク)も、私の棚には何十年分もたまりました。「コーラスライン」はオ―ディションを全体の枠組みにして、 誰がオーディションに合格するかということをゴールに置いたミュージカルですが、この「アワード」は「授賞式」を全体の枠組みにして、誰がどの賞を獲るかということをゴールに置き、そこから見えてくる人間模様を描いたミュージカルです。 授賞式(アワード)からブロードウェイの舞台人の生きざまを描きたいと思い、書きました。

2018年1月、ミュージカル「スター誕生」の稽古場で、作曲の久田菜美さんにこの新作ミュージカルのアイデアを、殴り書きの紙切れ1枚で渡しました。「スター誕生」のブロードウェイ版を創りませんか?と言うと、 久田さんは「それは分かりやすいですね」と理解したようでした。「スター誕生」は70年代の日本の歌謡曲をモチーフにした音楽づくりでしたが、今度はブロードウェイ・ミュージカルをモチーフにした音楽です。王道ですから、 ミュージカル作曲家として腕が鳴るところでしょう。華やかなダンスシーンも、たくさん用意しました。華やかなタップダンスも入れたいと思いましたので、馴染みの藤井真梨子さんにタップの振付を頼みました。

「スター誕生」と同様、登場人物と劇中登場する作品や曲はすべてフィクションです。5年後のトニー賞という設定にしましたので、現実にはないデタラメの新作ミュージカルを4つ、考え出しました。
【1作品目】ミュージカル「キングペンギン」
キングペンギンの恋愛・結婚と命がけの子育てを描いたミュージカル。地球の環境破壊によって絶滅が危惧される愛らしいキングペンギンの生態が描かれる。
【2作品目】ミュージカル「グッバイ・ドーリー!」
ヒット・ミュージカル「ハロー・ドーリー!」の続編ミュージカル。40年前に3日間だけドーリー役を演じ引退したミュージカル・スター、メアリー・ハットンのブロードウェイ復帰作。
【3作品目】ミュージカル「名作誕生」
名作「風と共に去りぬ」を、小説の作者マーガレット・ミッチェル、映画製作者のデヴィッド・O・セルズニック、映画の主演女優ヴィヴィアン・リーの3者の視点から描いたミュージカル。
【4作品目】ミュージカル「ミスター・プレジデント」
自分の意見を持たない善人の俳優が、周りにおだてられて政治家に当選し、ついには大統領に就任。周りに操られ、国家を破滅に導いてしまうスラップスティック・コメディ。

実は4作品とも、この作品の執筆のために考え出した作品ではありません。時期はそれぞれ別ですが、普通に新作ミュージカルのアイデアとして、以前から私の頭の中にあったミュージカルです。 私はいつも新作ミュージカルのアイデアを考えながら生きていますので、アイデアだけで書いていないミュージカルが、頭の引き出しの中にたくさん置いてあります。その中から4つ、 それぞれ特徴が異なる作品を選んで「アワード」のノミネート作品としました。4分の1ずつなので作品のエッセンスしか描けませんでしたが、稽古してみると、やはり4作品とも面白く、1本のミュージカルにしてみたいな・・・ という思いは浮かんできます。将来スピンオフ作品を作るかどうかは別にして、私にしてみれば、こんな作品が未来のミュージカル・シーンに登場しても不思議はないという思いで構成しました。

「キングペンギン」は、初めて「キャッツ」を観た1980年代から、仲間たちと度々話し合ったなかで、すでにアイデアとしては出ていました。私は、もし動物を主人公にしたミュージカルをつくるなら「鳥」だと思っていたのです。 しかも動物園の鳥かごの中で生きている鳥たち。世界のあらゆる国から連れて来られた色鮮やかな鳥たちのミュージカルがいいと思っていました。タイトルは「スカイ」。全編フライングを多用する演出が必要で、実現出来ていません。しかし、 ペンギンなら飛べないので、それよりは実現可能かも? 愛らしいビジュアルとコミカルな動き、一途でけなげな生態が人気になるかもしれないと思いましたが、どうでしょうか。

「グッバイ・ドーリー!」で描いた、かつてのミュージカル・スターの復帰物語は、メアリー・ハットンという名前でお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、ミュージカル映画「アニーよ銃をとれ」などの主役を演じた 1950年代のミュージカル・スター、ベティ・ハットンをモデルにしています。彼女は、わずか10数年のキャリアで女優を引退し、消息不明となり、後年、地方の教会で家政婦として働き、困窮した生活を送っていることが分かり、 世間を驚かせました。私はこの実話を、かつて自作の「ガールズ・オン・ブロードウェイ」で描きましたが、今回、別のストーリーを付け足して書き直しました。別のストーリーとは、駆け出しの脚本家が、 スター女優に「あなたを主演にした脚本を書きます」と誓った約束を数十年かけて果たした時、スター女優はもはや、かつてのスターではなかったという物語です。このアイデアも、古くから私の頭の引き出しにあった題材で、 今回ようやく使うことが出来ました。

「名作誕生」は、「風と共に去りぬ」の裏話を題材にしたミュージカルです。映画「風と共に去りぬ」は、中学時代に見て、私をドラマの虜にした作品です。すでに日本では小説も映画も著作権が切れ、 作者マーガレット・ミッチェルも死後70年を過ぎましたので、気になっていた題材です。東宝や宝塚で古くからミュージカルとして上演していますが、別の手があるかなと考えていました。そこで今回は、作家と映画製作者、 主演女優の3人の視点から「風と共に去りぬ」を描く別角度のミュージカルにしてみたら、より映画好きの方にも楽しんでもらえる作品になるかも、という思いで書いてみました。前作「タイムトラベラー」に入れたタイタニックの物語のように、 観客の皆様がよく知っている題材をひとつ入れてみようと思ったのです。私も大好きですし、とにかく、今回の紙数では、とても描き切れない面白エピソードに満ちている題材なので、うまく構成すれば、充分一本の作品になるのではないでしょうか。

「ミスター・プレジデント」は、ひとつオフっぽい作品があってもいいなと思い、入れた作品です。「ヘア-」「ゴッドスペル」「コーラスライン」「レント」など、オフからオンに上がって来た作品は、前衛的な実験作、野心作の香りが漂い、 大好きなのです。見れば低予算のステージだと分かるのに、大きなミュージカルより面白いし想像力を刺激してくれるなんて、クリエイターにしてみれば、こんなに羨ましい作品はありません。この作品は、今なにかと話題のアメリカ大統領と、 チャップリンの名作「独裁者」から発想しました。もし最悪の大統領が誕生したら、という演出家のアイデアを、ニューヨークの若き舞台人たちがみんなでミュージカルにして行きます。オフで最初に幕を開けた時は酷評され、 続演が危ぶまれるストーリーも描きたいと思っていました。

出来上がった台本は、ブロードウェイ・ミュージカルへの私の愛がいっぱい詰まった作品になりました。観劇後、トニー賞を見終わった時のように「ああ、ミュージカルって、いいもんだな」と思っていただけたら、それ以上の幸せはありません。

ミュージカル「アワード」
作曲家プロフィール
久田菜美(作曲・編曲・音楽監督)

東京都出身。東京音楽大学作曲・指揮専攻(芸術音楽コース)卒業。大学でクラシックから現代音楽までの作曲法を学び、卒業後は主にピアニストとしてクラシック、ポップス、ジャズ、合唱と幅広く活躍中。 舞台においては、ミュージカル「スペリング・ビー」や「モンスターズアンセム」にてキーボードで参加し、その他多数のミュージカル俳優やミュージカル女優のライヴにて伴奏を行っている。 ミュージカル座では、「野の花」「不思議なラヴ・ストーリー」「アイランド~かつてこの島で」「BEFORE AFTER」「スペリング・ビー」の音楽監督と演奏を担当。 ハマナカトオルと組んだオリジナル・ミュージカル「チェアーズ」「スター誕生」「ハートスートラ」「アワード」の作曲・編曲・音楽監督として、魅力的な歌曲を多く創作している。

ミュージカル「アワード」
作品ビジュアル
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舞台写真
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