ウェディングドレスを着た三人の花嫁の結婚式当日を描くミュージカル・コメディ。 女性 三人だけで演じる上演時間50分ていどの一幕もの。初演は1985年。ハマナカトオルが20代後半で書いた作品で、その後 1995年に ミュージカル座第一回アトリエ公演として上演。2004年のミュージカル三劇団合同公演(銀座博品館劇場)「 That s Musical! 」など、たびたび上演されている。
ミュージカル「三人の花嫁」は、1995年のミュージカル座創立時に第一回アトリエ公演として上演したもので、このホームページに上げている作品としては、もっとも古いものです。台本を書いたのはもっと古くて、 チラシが残っていなくて確かなことは分からないのですが、恐らく1985年。吉祥寺のライヴハウス「デビューゲート」で上演したのが始まりです。まだワープロで書き出す以前。レポート用紙に手書きで書いていた頃でした。 手書きの台本は、今でも私の部屋に残っています。携帯電話もなかった時代の台本ですので、その後上演するたび、少しずつ書き直していました。ところで、話がちょっと脇道にそれますが、携帯電話やインターネットの普及は、 人間の生活を大きく変えましたね。ないと不自然なほど、私たちの生活に深く浸透しています。私が作品を書いてきたこの40年ほどで、コメディも変わらざるを得ませんでした。今や携帯がない現代劇は、お客様に違和感を生じさせるかもしれません。1980年代までに書かれた現代劇やコメディに携帯電話は登場しませんので、製作者にとっても悩みの種ではないかと思います。うんと古い時代を描いた物語とか、 時代をはっきり打ち出している作品ならお客様も理解するでしょうが、現代劇のコメディで固定電話しかなかったりすると、「携帯があれば一発で解決なのに」と思わせてしまうシーンもあり、なかなか悩み深いところです。 そうした原因で名作が上演されにくくなることも残念ですし、作者が亡くなっていたりすると、おいそれと書き直すわけにも行かず、たった数十年前に書かれた作品なのに時代遅れ感が甚だしいとは、とってもつらい問題だなあと思っているのです。 映画は大丈夫です。何年に作られた映画だと分かって見ていますから。しかし舞台は、少し前の台本でも、今上演する意義を打ち出さなければならず、そこが難しいところです。
閑話休題。この作品を書くきっかけとなったことを少し話しておきましょう。当時私は、社長が所有していたその吉祥寺のライヴハウスで、ひと月にいっぺん、なんらかの舞台を発表することになっていて、数作品を連作していました。 26~27歳くらいの時だったと思います。忙しくて、ある日、仲間のミュージカル女優を三人集めて何かをしなければいけないのにアイデアが湧かず、苦しまぎれに稽古場で作業をしていた衣裳さんに、 「あなたが舞台で女優に着せたい衣裳は何?」と聞きました。するとその人が「そうね。私はやっぱりウェディングドレスよね。(男の方です。)」と答えました。ピンときて、 ウェディングドレスを着た三人の花嫁のミュージカルを書くことにしたのです。この時の台本は、途中で一回、セーラー服を着た高校時代のエピソードに変わるのですが、着替えに時間がかかるため、やがて書き直して、 ウェディングドレスだけの物語に統一しました。初演の舞台が終わったあと、お客様だった業界で活躍する方に「作家の方に会いたい」と呼び出されて「こういう活動は最高だから続けてほしい」と褒められ、 少し自信になったことを記憶しています。
1995年に創立したミュージカル座の第一回公演もこの作品でした。2004年に瀬川昌久先生企画監修により銀座博品館劇場で上演したミュージカル三劇団合同公演「That's Musical!」でも上演し、その後、 ミュージカル座の劇団員たちによってたびたび上演されています。最近のコロナ禍のなかでも、田宮華苗さんたちによるリーディング公演と配信が行われました。三人の女性たちが、結婚式当日、 自分の結婚にいたるいきさつと未来への希望を語る内容で、上演時間は50分ほどの一幕ものです。これだけでもいいのですが、私は、結婚した三人の女性が出産して母となり、娘たちとの物語を描く 第二幕をつけて、 女性の一生を描く二幕形式の寓話劇にしたいというのが最終目標です。「チェアーズ」「二人でミュージカル」と同じですね。第二幕と合わせて、どんなタイトルにするかは決めていません。いずれホームページで発表するつもりで、 それが実現出来た後に、音楽も発表出来ればいいと思っています。
下のビジュアルは、1996年に、スタジオ錦糸町で上演された時に撮った白黒のスチール写真です。左から有倉敦子さん、白勢 恵さん、三根陽子さん。三人とも舞台芸術学院の卒業生で、とてもきれいな方でした。